2018年02月 天理大学附属天理参考館
「はれの日の装い〜装身具の歴史〜」
今回が2度目の訪問になる天理参考館です。「参考館」だと何をメインにしているのか判りにくいですが、「民族博物館」です。
天理教の布教という宗教組織の総動力を生かして世界各国の遺跡や遺物などをコレクションしてきた経緯があるみたいです。
それだけに、「学術的価値が高いもの」に留まらず、収集家にとって価値があると判断したんだろうなと思うモノもたくさんあり、枠にとらわれない展示物には目を楽しませてくれ、新たな好奇心を刺激してくれます。「民族博物」という性格からくるものもあるのかもしれません。
常設展示の魅力をお伝えするのは、またの機会に譲るとして、期間限定の「はれの日の装い〜装身具の歴史〜」と題する特別展と、学芸員による講演会をリポートしたいと思います。
お気に入りの商店街内店「天理ラーメン」でランチを済ませて、商店街通りを通り抜けると、「おやさま」が今なお生活を営むと言われている天理教教会本部が見えてきます。そういえば、2017年の年末はここで過ごしたんですよね。念のためゆうときますが、信者ではありません。
商店街通りを挟んで、本部の向かいに敷いてある通りが下写真です。鳥居がいくつか並んでいるので表参道なのでしょう。奥に見えるのが、参考館なのですが、天理市には、そっくりの建物があちこちに建っています。ビル風の神社とでも言うんでしょうか。いやいや神社風の長屋風になったビルとでも言うのか・・・。それらの区画1つ1つは、博物館だったり、天理大学のキャンパスだったり、そして○○県詰所だったり、そういう看板が掲げられています。奈良に来るなら、天理は個性的だからという理由でぜひおすすめです。
ちょうど、鳥居の改築工事の最中のようでした。
工事告知板を見て、二度びっくり。施工者が直営の「天理教営繕部」。どういう組織をしているのだろう。つくづく興味深いです。
「化粧の定義」
《行為》身体に色を塗る、形を変える、洗顔、整髪も含む
《意味》美化、保護、集団への帰属、身分・年齢・未婚既婚の表現、宗教的
《行為》のうち「皮膚の加工」「衣装」「装身具」を特に取り上げる。
「縄文時代」
●土偶にみる「化粧」
- 装身具…石、土、動物の骨(角・牙)、貝
祭祀者はより強い力を得るためにより多くの装身具を使用
- 入れ墨か彩色…土偶の顔面に赤着色
例:茨城県石神下貝塚の土偶(参考館所有)
「弥生時代」
- 青銅やガラスが渡来(首長や祭祀者限定)
石は翡翠、貝は入手困難な南海(鹿児島)産(首長や祭祀者)、牙や骨は減少
- 魏志倭人伝、後漢書東夷伝…男性に入れ墨
- 隋書倭国伝…男女に入れ墨
「古墳時代」
- 古墳に副葬の装身具
前期…祭祀用装身具(玉、形見)
中期…武力誇示(刀剣、甲冑)
後期…権威や富の象徴(冠、耳飾、装飾付太刀)
- 装身具は古墳時代終焉とともに減少していく
「飛鳥奈良時代」
- 遣隋使や遣唐使により中国制度や文化の流入
- 律令制度
- 装身具減少、着飾り方の制度化・ルール化(冠位十二階)
「平安時代」
- 遣唐使廃止 → 国風文化の発達
- お歯黒、白肌(非労働階級のシンボル)、小さい眉、おちょぼ口
「鎌倉〜桃山時代」
- 武士の台頭
- 月代がはじまる
- 男性の白塗りは貴族のみ
「江戸時代」
- 女性の髪形が多様化・大型化
- 髪の装飾具(平安時代以来)だが、身体に直接つけるものではない
- 太平の世→飾り立てる余裕 男性は刀・印籠・キセル
「明治大正時代」
- 洋風化政策
- 月代・お歯黒の禁止令
- ここで身体に直接触れる装飾具が出現(アクセサリー)
「昭和〜現在」
- 戦後
化粧はみだしなみ
メーカーによるキャンペーン・広告の活発化、化粧法指導による顧客取り込み
- 高度経済成長期
みだしなみから個性の表現へ
小麦色の肌、ナチュラルメーク、ガングロ、美白
最後の締めくくりとして、日本独自の装いが発達した時代と装身具を使用しない時代が長かったことが、日本における「化粧の歴史」であり、それを特徴として挙げていました。
講演内容としては、「化粧」についての歴史通観に偏りすぎたきらいがあり、せっかくの特別展が「はれの日の装い」をテーマにしているのだから、たとえば、装飾色(神聖色)が「赤(例えば古墳に塗られる朱、入れ墨に使われる朱)」から「白(白いお肌にこだわる平安時代の貴族)」に変わっていくその世界観に触れて講演しても良かったのではないかという気もします。
一番良かったと思う事は、講演をされていた学芸員による特別展示会の解説です。
一方通行的な説明をするタイプの方ではないようで、聞きに来ていたお客さんの問いかけにも真摯に答えてらっしゃいましたし、判らないことは判らないと明言するその誠実な態度がとても好感度が高かったです。
初公開の出土品を数多く展示していることが今回の目玉で、出土した遺跡を見てみると実に面白いのです。北海道から沖縄まで全国各地に至っていて、しかも地域に偏りがありません。青森や岩手の出土品なんかもとても興味深く見学させて頂きました。縄文時代のものはやはり東海地方以東が多いのですね。
どうやって入手しているのか聞いたところ、その地域の考古学会から購入することが多く、犬の血統書のようにどこどこの遺跡から発掘されたもので年代はいつと思われるというような証明書がついているんだそうです。
こういうお話を聞けたことも良かったです。
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