2018年06月 大阪市立美術館

「江戸の戯画」


パンフレット(表)  パンフレット(裏)

パンフレットの表紙にも、そしてまた大阪市立美術館のエントランスにも主役として飾られているのが歌川国芳の手による「金魚づくし」で、ベルギー王立美術歴史博物館からの里帰り展示が大目玉だったようです。
残念ながら展示期間の前期のみの公開でしたので、写しでしか見れませんでしたがそれでも楽しませてくれました。パンフレット(裏)の下部分に宣伝が載っていますので、是非見てみてください。

「お上手」では言い表せない、高度な才覚を感じます。金魚づくしシリーズの10作品目は、原本が伝わらず誰かが書き写したであろう作品でしか知り得ないのですが、色使いやキリッとした線、細やかな肉体の動きが全然違うなぁ…それでも着眼点は歌川国芳その人のものだったんだろうと素人目ですがそう感じます。


戯画は、風刺画だったり人間の生活を動物に擬して描いた絵だったり幅広いジャンルを包括しているのですが、今回の展示は大阪で誕生したと言われる「鳥羽本」を取り上げています。そして、大阪の笑いが江戸の絵画(戯画)にも与えた影響を見ていくという感じです。

しかしながら、その笑いというものが理解しがたい絵も多くありました。「エッ笑える絵って? 絵を見て笑うということ」という講演会がやっていたようで、笑いのツボを解説してくれていたのかな。惜しいことをしました。
ちなみに金魚づくしシリーズでは、相棒は八岐大蛇退治の巻で描かれる奇稲田姫の「あれ〜」と倒れこむ姿が、金魚のくせに姫っぽすぎて笑いのツボにはまり、私は金魚のしっぽが邪魔にならないよう縛っていたりフンドシ代わりにおまたを挟んでいるのがツボでした。
歌川の描いた絵ってどれも「笑い」がなんだか現代風なんですよね、これもすごいと思います。

動物に人間の仕草をさせる事によって生じるギャップに「笑い」や「可愛さ」が生じるわけですが、人間そのものの仕草に「笑い」を感じる事はなかなか難しく理解できない事が多い。
初期の鳥羽絵本は「放屁」と「すってん転ぶ」によってお尻を強調している箇所が多く、そこに「笑い」を表現しているだろうことは想像できます。
大岡春卜という大阪の絵師による「画本手鑑」にも、二人の男性がフンドシも着けていないお尻を露わにし、突き出し、ビームのような放屁を群集に向かってしています。このシーンを収録する本のタイトルが「手鑑」となっているように、「笑い」の要素として定番化していたのでしょう。
相棒いわく、キン肉マンが放屁で飛ぶシーンを思い出せば判るだろう、放屁ビームがみんなは大好きなのだとのこと。ううむ、一理ある。

「忠臣蔵」が、絵師・耳鳥斎や歌川国芳によっていくつか題材に取り上げられていまして、この時代における「歌舞伎」の影響はとても大きいのだとおもいました。全国各地(特に山村・農村)に「農村舞台」が数多く残っている事が調査報告に上がっているように、江戸時代における文化に歌舞伎は無視できないものとなっています。

歌川国芳は反骨精神の持ち主だったようで、当時、幕府より「贅沢禁止令」のお触れが出た時、遊郭図をスズメに擬人化させた画を描いたり、歌舞伎の広告を壁の落書きのようにラフなデッサンで書きなぐったりなんかしていたようです。画のセンスの良さで、「反骨気質」が隠されてしまっているのもお見事と言うべきなんだろうか。

北斎の「漫画」(※ 「北斎漫画」漫ろに描いた画という意味)は肉体表現が、脂肪が揺れ動きそうに見えるくらい繊細な表現で見とれてしまいます。
特別展示の「第三章 北斎」に「驚異の才能で世界に名を馳せる画狂人」とサブタイトルがついているくらいすごいのですが、私は歌川国芳の遊び心が一番好きです。



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