2018年10月 紀伊風土記の丘

「古墳時代の海の民とその社会」

〜黒潮の海に糧をもとめて〜


近頃、博物館めぐりのスタンプラリーというものを集めています。しかし、和歌山風土記の丘に来なければ数が足りませんでした。特別展なるものも開催しているし、古墳群もあるみたいだし、つまらなさそうだけど行ってみるかと相成りました。

何度か来ている和歌山であります。前回は「街道を行く」の須田画伯の「芯ですな」の発言に惹かれ日前宮をお参りしたのでした。しかし、もう画伯が感じた芯というものは残っていませんでした。
そして、和歌山には新たにCCCという有名なツタヤ図書館ができます。そう、和歌山は新生和歌山へと生まれ変わろうとしているのです。
移動中の電車やバスで相棒とCCCについてひたすら議論。図書館はもう死んでいる。

バスには私たち二人と鳥が一匹の乗車でした。ウグイスだと思われますが、バスが停車している時は寝ていたのに、動き出した途端ウンコしてチョコチョコと動き出した。こういうの見ると鶏肉が食べにくくなります。

バス停から博物館へ向かう道には埴輪がずっと置かれていた。さらに、博物館脇にも埴輪がたくさん並べられていたし、木とかも置いてあった。しかし、今の私たちにとってはなんの関係もないのだ!熱く、ただ熱く、ツタヤ図書館の事を語るのみなのだ!そんな私たちを、まるでツタヤ図書館のように過剰サービスで待ち受ける埴輪達。
「埴輪よ、お前もか!」

こちらが今回の特別展示となっている。この釣り針が紀伊半島独特のもので、今のところ古墳時代後期のものとしては紀伊半島の西部でしか発見されていないそうだ。これが後に志摩、伊豆、三浦でも発見されるようになり、黒潮に乗って海の民がつながっていたであろう事実が浮かび上がってくるのだ。

「街道を行く」で司馬遼太郎が書いていたが、この時代のカツオ釣りは麻糸であまり釣れなかったそうだ。江戸時代にテグスという強い糸が出来てカツオの一本釣りが流行ったらしい。

一番の目玉として紹介されているところが和歌山市の西庄遺跡である。こちらは大規模な集落跡で色々な生産活動をしていた跡があり、様々なものが展示されていた。
その中でも製塩は大規模に行われ、地面の断面をはぎ取ってみると製塩土器が厚く堆積していた。
この製塩土器というものが紀北独特のもので「丸底U式製塩土器」と言い、粘土紐で半球状の形を造り、内部を赤貝の貝殻の背を押し当てて成形するそうだ。なので内部に貝殻の筋がみえる。
製塩土器としては知多半島のものも展示してあり、こちらは砂浜に刺すために土器の下に棒のようなものがついているのが特徴的だ。大量に作られていた為、政治勢力とのつながりが考えられているらしいが、紀伊とのつながりは書いていなかったので関係ないと思う。
他にも製塩土器がいくつか展示されていて、四条畷出土は牧場なので馬に嘗めさせる塩と推定されており、御坊市出土は紀伊内陸部の潟湖なので焼き塩作業と推定している。堺市出土の未使用・完成形の製塩土器は何も推定してなかったが、塩を煮詰めるため割れやすい製塩土器が完成形で出土したのが珍しいのだとか。
このように、内陸部でも製塩土器が出土しているのは、海の民が塩を製品として交易をしていたということだと思われる。

この写真が外に展示されていた石敷製塩炉と言われるもので、西庄遺跡で発掘されたものをこちらに移築しているそうだ。この並べられた河原石の上に丸底式製塩土器を置いてひたすら焼くらしい。このような炉が18基以上発見されている。

漁具の展示も様々なものが置かれていた。複合式釣り針、鹿角製釣り針、タコツボ、土錘、棒状石製品などである。カツオ釣りに使われていたと思われる釣り針は、針先にカエシが無く腰部に突起がある。タコツボは紀伊に少なく和泉と淡路に多い。棒状石製品は使途不明品である。
これらの漁具も分類されている図も展示してあったが、詳しい説明は先ほど述べた釣り針が主だった。
そして、紀伊南部と三浦半島、房総半島をつなぐものとして洞穴遺跡がある。海蝕洞穴を居住地や墓として利用している。
この洞穴遺跡では紀伊半島から古墳時代後期に伝わったと思われる複合釣り針が出土している。
房総半島の館山市の遺跡では船葬(丸木舟を棺とする)が行われていたようだが、これがどことつながっているのかに関してはよく分からなかった。

今まで見たことも気にしたことも無かった道具の展示はすごく新鮮でした。釣り針で各地のつながりを知ろうというのも面白い試みかもしれません。
ただ色々と疑問もでてきます。紀伊と志摩や関東のつながりは古墳時代後期からなのか?知多と西庄のつながりとはなんなのか?そんな疑問もあの分厚い本みたいなのを購入すれば分かるのかもしれないのですが・・・。

今回の特別展示により隅っこに追いやられていた常設展ですが、ここ岩橋古墳群で出土した変わった埴輪を展示しておりました。両面人物埴輪とか翼を広げた鳥埴輪などです。全国でもここでしか出ていないようで非常に興味深いです。ただ、今回は特別展に必死になりすぎて常設展を見る時間が無かったのが残念でした。
またウグイスと一緒に訪れることにしましょう。





博物館めぐりに戻る