2020年2月 香川県埋蔵文化センター

10年ほど以前、時々うどんを食べに讃岐の国へと足を運んでいたその時、なにやら讃岐の国は湧いていました。その理由は「讃岐国府跡の場所が分かるやもしれぬ」ということでありました。
以来、常々気にはなっていたのですが、いかんせん遠い地での出来事ゆえ、なかなか畿内に情報は入ってきません。今回は讃岐国府跡がどうなったか確かめる為に、坂出市は府中町の埋蔵文化センターへ訪問したのであります。

讃岐国府跡は高松市ではなく、お隣の坂出市に所在しています。地図で場所を見てみると、山の合間の少し開けたところに立地していて、東の高松平野や西の丸亀平野と比べてみると、非常に小さな平地です。すぐそばを綾川が流れているので、海へ出やすく交通の便が良さそうです。

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JR讃岐府中駅から綾川沿いに西へ行き、橋を渡って少し高台へ登ると香川県埋蔵文化センターがあります。国府跡を見下ろす場所に作られていて、国府跡研究が主な調査対象であると思われます。
高松市にも埋蔵文化センターがあることを考えると、それぞれ発足時の前身が違うであろうと推測され、設立時の話しなども聞いてみたいものであります。

この日は「讃岐国府ヒストリア」が開催されておりました。讃岐国府跡が国の史跡になりそうになっているのを記念しての特別展で、今まで調査してきたことのまとめを軽く紹介していました。この特別展示室と常設展示室の2部屋があるのですが共に狭い空間での展示であり、文化センターが発掘物の調査・保存が目的の施設だということがよく分かります。

常設展はサヌカイトが使用された石器時代から近世の高松城までが紹介されています。
その中で気になったのが善通寺市で発見された旧練兵場遺跡。弥生時代から古墳時代初頭までの時代に数百棟の竪穴住居が繰り返し建てられた集落で、四国・畿内・山陽・北九州からの土器が多く持ち込まれ交易の拠点でもあったと推測されています。
各地の弥生土器が展示されていて、地域によって少し形が違います。そんな土器が並ぶ中に絵画土器もありました。説明文を見ると、弥生時代の絵画土器は全国で約70点の出土。9割は近畿で出土しており、香川県では2点しかないようです。有名な唐古・鍵遺跡の建物絵画に比べると質素な建物に見えますね。


古墳時代で気になったのは坂出市の別宮北古墳群です。全部で6基の円墳があると書かれていますが、帆立貝式古墳のようにも見えて、橿原市の四条古墳群と似ている気もします。


橿原市の四条古墳群でも円筒埴輪・馬型、家形埴輪が出土しておりますが、こちらでも出土しています。つながりがあるというよりは、大和朝廷の下で地方豪族の墓制も統一されていたのかもしれません。

その後の時代も軽い紹介が続き、高松城も石垣のパネル展示のみでした。最後に目玉のように展示されていたのが、弥生時代の土偶であります。弥生時代の土偶としては香川県唯一のもので、魏志倭人伝に書かれている入れ墨の顔を想起させるものだそうです。
私としては、頭の突起が非常に気になるのであります。これは角でしょうか?それとも兜でしょうか?ぜひ解明してほしいものです。

これにて常設展は終わりいよいよ讃岐国府ヒストリアへ。どんなものが展示されているのかドキドキしていたのですが、こちらもパネル展示が主でした。
国府の位置は江戸時代末期から地名研究がされていて、大正14年に現在とほぼ同じ位置を突き止めているそうです。そして、発掘調査でより確実に分かった今後は、施設の構造や範囲の調査をすすめていくそうです。
展示物としては、硯や墨書土器など役所らしいものがありました。黒色土器という少し変わったものがあったのが興味深いですが「ススをぬりつけて黒くなる」と聞いたものの詳細は分かりません。
全体的に軽い紹介だけなので「讃岐国府ヒストリア」という題名が勝ちすぎていました。展示は本来の業務ではないのであまり手をかけていられないのだと思います。詳しく知りたい人は展示室脇の図書コーナーで確認しろということでしょう。


国府の発掘調査は1977年から1981年にかけて行われていますが、その時は確証が得られず、2009年から再度調査をし、2011年には国府の主要施設を発掘調査により明らかにしたそうです。
そこからさらに開法寺東方地区を重点的に調査し、奈良時代〜平安時代末までの巨大な建物群がが発見され、外側にひさしをもつ格式の高い建物も多かったとのこと。
また、釉薬をかけた器や、多量の瓦など、一般の集落跡ではほとんど見られない遺物が多く出土していて、その点でも国府跡であるということの後押しができるのです。

詳しいことは香川県埋蔵文化センターのHPに書かれているのでそちらをどうぞ見てください。
※香川県埋蔵文化センター:讃岐国府跡探索事業

このページを見ていると、讃岐国府跡はミステリーハンターという地域のボランティアスタッフが一緒に調査したことが分かります。地元の歴史を知るいいきっかけになると思うので、このような活動が広がっていくと面白いのではないでしょうか。私も少し興味があります。



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